三都杯決勝大会2025-26。激戦の予選を勝ち抜き、決勝のステージに立ったのは、Befineの高橋みさきさん。
モデルと向き合い、限られた時間のなかでヘアをつくり上げる。その手つきは迷いなく見える。
けれど、ここに辿り着くまでの時間が、ずっと順調だったわけではない。
コンテストに挑み続けるなかで感じた迷い。一度は競技から距離を置こうと思ったこと。それでも再びステージに戻ってきた理由。
大会を終えた高橋さんは、自身の歩みを振り返りながら、静かに言葉を紡いでいく。
自分の「好き」と「嫌い」を、すべて出した
決勝のステージで高橋さんがつくり上げたのは、鮮やかな赤をまとったモデルのヘア。
ステージ上では、カットだけではなく、モデルの佇まいや衣装、演出、そしてチーム全体でつくる空気までがひとつの作品になっていく。
三都杯を終えたいま、高橋さんは今回の作品について、
「自分の好きと嫌いが、全部に出たかなと思いますね」
と振り返る。
“好きなものだけ”をきれいに並べるのではない。
これまで自分が見てきたもの。積み重ねてきた技術。違和感を覚えたもの。惹かれてきたもの。
そのすべてが混ざり合い、ひとつのデザインとして現れる。
決勝という極限まで集中力を求められる場所だからこそ、ごまかすことのできない、その人自身の感覚が作品に表れる。
高橋さんにとって今回の三都杯は、そんな自分自身と向き合う時間でもあった。
コンテストから、一度離れてみようと思った
高橋さんはこれまで、クリエイションとコンテストに何度も向き合ってきた。
けれど、その道の途中では、
「1回、コンテストを離れてみた方がいいかなと思います」
と考えた時期もあったという。
コンテストに挑戦するためには、多くの時間が必要になる。
モデルを探し、デザインを考え、ヘアを検証し、衣装やメイク、演出を組み立てる。
何度も試し、壊し、またつくる。
大会当日の短い時間の裏側には、途方もない準備の時間が積み重なっている。
挑み続けていれば、迷う瞬間もある。
「自分は何のためにやっているのか」
そんな問いが生まれることもある。
それでも高橋さんは、再びコンテストのステージに戻ってきた。

「結局、楽しくて。またやっちゃう」
離れてみようと思っても、また挑戦する。
その理由を高橋さんは、とてもシンプルな言葉で表す。
「また、やっちゃうんですよね」
そして、
「結局、楽しくて」
と笑う。
コンテストに出れば、結果がつく。
評価されることもあれば、思うような結果にならないこともある。
けれど、その結果だけでは説明できない何かが、クリエイションにはある。
自分が頭の中に思い描いたものを、モデルの上に現実の形としてつくり上げていく時間。
仲間と相談しながら、一つの世界観をつくっていく時間。
そして、自分でも予想していなかったデザインに出会う瞬間。
それらすべてを含めて、「楽しい」。
だから、またやりたくなる。
それは、高橋さんが創作を続けてきた原動力なのかもしれない。
積み重ねたものは、技術として残っている
何度もクリエイションに挑戦してきたからこそ、身についたものもある。
高橋さんは、自身の技術について、
「いろいろ積み重なって得た技術」
と語る。

一度のコンテストのためだけの技術ではない。
試行錯誤した経験はサロンワークへ還元され、日々の仕事で培った感覚は、またクリエイションへと戻ってくる。
その往復のなかで、美容師としてできることが少しずつ増えていく。
決勝のステージで迷いなく動く手も、突然身についたものではない。
その背景には、これまで何度もモデルと向き合い、髪と向き合ってきた時間がある。
ひとりでは、あのステージには立てない
モデル。メイクを担当する仲間。衣装や舞台を支えるチーム。
舞台袖では言葉を交わし、互いに確認しながら、本番の瞬間を待つ。
決勝のステージに立つのはひとりでも、作品はひとりでは完成しない。
競技が終わったあと、仲間と並び、笑顔を見せる高橋さん。
そこには、ひとつの作品をつくるために同じ時間を過ごしてきたチームだからこその空気がある。
三都杯という舞台は、ひとりの美容師の技術を競う場であると同時に、人と人が一緒に何かをつくり上げる場所でもある。
「一番に名前が挙がるようにしたい」
大会を終えた高橋さんは、これからについてこう語る。
「1番に名前が挙がるようにしたいです」
何かをつくる人を探したとき。
クリエイションについて語るとき。
美容師の名前を挙げるとき。
そのときに「高橋みさき」という名前が最初に浮かぶような存在になりたい。
これまで積み重ねてきた経験を振り返りながらも、その視線はすでに次へ向いている。
三都杯決勝大会は、ひとつのゴールではない。
また次の作品をつくるための通過点だ。
創り続ける、その先へ
コンテストに挑み続ける理由を、明確なひとつの言葉にすることは難しい。
勝ちたいから。
上手くなりたいから。
評価されたいから。
自分の可能性を知りたいから。
そのどれもが理由でありながら、高橋さんの言葉を聞いていると、もっと根源的な気持ちが見えてくる。
つくることが、好きだから。
一度距離を置こうと思っても、またつくりたくなる。
思うようにいかないことがあっても、次のデザインを考えてしまう。
その繰り返しのなかで、高橋みさきという美容師の「Roots」は少しずつ形づくられてきた。
三都杯決勝大会2025-26を終えた今も、その歩みは続いている。
次に彼女がつくるものは、どんな景色を見せてくれるのだろう。
その答えはきっと、これからのクリエイションのなかにある。
